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飲食店の開業準備で、「せっかくなら他店にないプレミア酒やヴィンテージボトルを並べたい」と考えるのは、とても自然なことです。
でも一方で、「高額なお酒をまとめて仕入れたものの、思ったより動かず、資金を圧迫する在庫になったらどうしよう」と不安になりますよね。
特に開業初期は、内装費、厨房機器、人件費、広告費、家賃、運転資金など、想像以上に現金が出ていきます。そこへ高額ボトルを何本も抱えると、見た目の棚は華やかでも、経営の足元が重くなってしまうことがあります。
結論からお伝えすると、開業初期の酒の仕入れは「希少性」よりも「回転する設計」が大切です。
プレミア酒やヴィンテージボトルは、お店の個性を出す大きな武器になります。ただし、最初からまとめて持つのではなく、売れ筋・看板・話題づくりの3つに分け、必要最小限から始めるのがおすすめです。
私たち亀屋矢崎商店も、業務店様と日々お付き合いするなかで、開業初期のオーナー様から「どこまで揃えればよいか」「珍しい酒を入れたいが、在庫が怖い」というご相談をよくいただきます。
その経験から言えるのは、繁盛するお店ほど、最初から大量に仕入れているわけではないということです。むしろ、少なく始めて、お客様の反応を見ながら育てていくお店のほうが、無理なく長く続きます。

飲食店開業で酒を仕入れすぎると、何が起きるのか
開業初期に酒を仕入れすぎる最大の問題は、「お金がなくなった」のではなく「お金が在庫に変わって動けなくなる」ことです。
たとえば、1本2万円のウイスキーを10本仕入れれば、それだけで20万円です。1本5万円のヴィンテージワインを4本仕入れれば、同じく20万円です。棚に並んでいる間は価値があるように見えますが、売れるまでは現金になりません。
飲食店では、開業してから数か月の間に、想定外の出費が出ることがあります。
- グラスや備品の追加購入
- 料理メニューの修正に伴う食材変更
- アルバイト採用費
- 販促物や看板の作り直し
- 客層に合わせたメニュー変更
- 売れ筋商品の追加仕入れ
このとき、現金がプレミア酒の在庫に変わっていると、本当に必要な投資ができなくなってしまいます。
開業初期に守るべきものは、豪華な棚ではなく、営業を続けるための身軽さです。
もちろん、プレミア酒やヴィンテージボトルが悪いわけではありません。
むしろ、バー、バル、和食店、焼鳥店、鮨店などでは、お店の世界観を伝える大切な存在になります。問題は「仕入れること」ではなく、「売り方が決まる前にまとめて抱えること」です。
開業初期に避けたい在庫は「高い酒」ではなく「売り方が決まっていない酒」
開業初期に避けるべき在庫は、単に高額なお酒ではありません。
本当に避けたいのは、次のような「動かし方が決まっていないお酒」です。
1. メニューに載せるだけで終わっているボトル
メニューに銘柄名を載せただけでは、なかなか注文にはつながりません。特にプレミア酒やヴィンテージボトルは、価格も高く、お客様にとって注文のハードルがあります。
「なぜこの店でこの酒を飲むべきなのか」
「どんな料理と合うのか」
「誰におすすめなのか」
「グラスで出せるのか、ボトル販売なのか」
ここまで決めていないボトルは、開業初期には重たい在庫になりやすいです。
2. オーナーの好みだけで仕入れたボトル
お店づくりにこだわりは欠かせません。オーナー様の好きなお酒があることは、むしろ魅力です。
ただ、開業初期は「自分が好きな酒」と「お客様が注文しやすい酒」がずれることがあります。
私たちも営業の現場で、「これは絶対に面白いと思って入れたんだけど、思ったより出ないんだよね」というご相談を受けることがあります。
その場合、商品が悪いのではなく、客層・価格帯・料理・提供方法との接点がまだ作れていないことが多いです。
3. 仕入れ理由が「希少だから」だけのボトル
希少なお酒は、たしかに魅力があります。しかし、希少性だけで仕入れると、「売りたいけれど、どう売ればよいかわからない」という状態になりがちです。
開業初期に必要なのは、「珍しい酒をたくさん持っていること」ではありません。お客様が思わず頼みたくなる理由を用意できることです。
たとえば、同じウイスキーでも、
- 食後の一杯として提案する
- 常連様向けの隠しメニューにする
- 料理とのペアリングで紹介する
- ハーフショットで試しやすくする
- 週末限定の飲み比べにする
このように売り方まで設計できていれば、高額ボトルもお店の武器になります。逆に、売り方が決まっていないまま仕入れると、棚の奥で眠る在庫になってしまいます。
飲食店開業時の酒の適正在庫は「7営業日以内」をひとつの目安にする
開業初期の酒の在庫は、まず「7営業日以内で回る量」をひとつの目安に考えると管理しやすくなります。
もちろん、業態によって差はあります。
樽生ビールがよく出る居酒屋、ワイン中心のバル、ウイスキーを揃えるバー、日本酒を売りにする和食店では、必要な在庫量は違います。
ただし、開業直後はまだ実績データがありません。最初から完璧な発注量を当てるのは難しいです。だからこそ、最初は「少し足りないかもしれない」くらいから始めて、売れ方を見ながら調整するほうが安全です。
考え方はシンプルです。
- 毎日出る酒:切らさないために厚めに持つ
- 週に数回出る酒:最小単位で補充する
- 月に数回出る酒:売り方を決めてから入れる
- 高額な酒:まず1本、反応を見てから追加する
開業初期は、すべてのお酒を同じ基準で持たないことが大切です。
ビール、ハイボール、サワー、グラスワイン、日本酒の定番など、日々の売上を支える商品は欠品を避けたいところです。
一方で、プレミア酒やヴィンテージボトルは、最初から本数を積み上げるより、「見せる1本」「売る1本」「次に育てる1本」に絞るほうが現実的です。
プレミア酒・ヴィンテージボトルは「3本ルール」で考える
開業初期に高額なお酒を扱いたい場合、私たちはよく「3本ルール」で考えることをおすすめしています。
1本目:お店の世界観を伝える看板ボトル
これは、すぐに売れなくても意味のある1本です。
バックバーや棚に置いたとき、お客様に「この店、面白そうだな」と感じてもらう役割があります。
ただし、看板ボトルは多すぎると印象がぼやけます。ウイスキーなら1本、ワインなら1〜2本、日本酒なら季節の1本など、まずは絞り込むほうが記憶に残ります。
2本目:実際に売上を作る提案ボトル
これは、グラス提供やハーフショット、ペアリングで動かすためのボトルです。
高額でも「試せる価格」に落とし込めれば、注文のハードルは下がります。
たとえば、いきなり1杯2,000円では出にくいお酒でも、少量提供や飲み比べにすると、「せっかくだから飲んでみたい」という気持ちが生まれます。
大切なのは、仕入れた時点で「どう提供するか」まで決めておくことです。
3本目:常連様やイベントで育てる予約ボトル
これは、すぐに通常メニューで売るというより、常連様への提案、記念日、週末イベント、限定メニューなどで活用するボトルです。
開業初期から大量に抱える必要はありませんが、お店のファンづくりには役立ちます。
ただし、この枠も最初は1本で十分です。常連様が増え、好みが見えてきた段階で増やしていくほうが、失敗が少なくなります。
すでに酒を仕入れすぎたときの3つのリカバリー策
「もう仕入れてしまった」という場合も、焦らなくて大丈夫です。在庫は、売り方を変えることで動き出すことがあります。
ここでは、開業初期のお店でも実行しやすいリカバリー策を3つに絞ってご紹介します。
リカバリー策1:高額ボトルを「少量で試せる商品」に変える
高額ボトルが動かない理由の多くは、お客様が興味を持っていないからではなく、注文するきっかけがないからです。
そこで有効なのが、少量提供です。
- ハーフショット
- 15mlのテイスティング
- 3種類の飲み比べ
- 食後酒セット
- 料理とのペアリングセット
たとえば、「本日の締めの一杯」として少量で提案すると、お客様は試しやすくなります。特にカウンター中心のお店では、スタッフのひと言が注文につながります。
「このボトル、実は開業のときにどうしても置きたくて選んだんです」
「今日の料理なら、最後に少しだけ合わせるとすごくきれいです」
こうした会話が生まれると、単なる高額商品ではなく、お店の物語になります。
リカバリー策2:料理メニューと組み合わせて“選ぶ理由”を作る
お酒だけで売ろうとすると、価格比較になりやすくなります。しかし、料理と組み合わせると、「この店で飲む理由」ができます。
たとえば、
- 熟成チーズとヴィンテージワイン
- 炭火焼きとスモーキーなウイスキー
- レバーパテとシェリー
- 鴨料理とピノ・ノワール
- だしを使った和食と熟成日本酒
- チョコレートテリーヌとラム
このように、料理との接点を作ると、在庫だったボトルが提案商品に変わります。
私たちが業務店様とお話ししていて感じるのは、売れるお酒は「銘柄の知名度」だけで決まらないということです。
むしろ、お店の料理、客単価、接客の流れに合った提案があるかどうかで、動き方が大きく変わります。
リカバリー策3:次回発注を止めて、在庫表を“見える化”する
仕入れすぎたと感じたときに、まずやるべきことは値下げではありません。最初に行うべきなのは、次回発注をいったん止めて、在庫を見える化することです。
難しいシステムは必要ありません。最初は紙やスプレッドシートで十分です。
最低限、次の5項目だけ確認しましょう。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 商品名 | どの酒が残っているか |
| 仕入価格 | いくら現金が在庫化しているか |
| 販売価格 | 何杯・何本売れば回収できるか |
| 開封状況 | 未開封か、開封済みか |
| 売る方法 | グラス、ボトル、セット、限定提案 |
この表を作ると、「なんとなく在庫が多い」という不安が、「このボトルを今月3杯動かせばよい」という行動に変わります。
在庫管理で大切なのは、完璧な表を作ることではありません。売るべき商品が、毎日見える状態になっていることです。
開業初期の仕入れで失敗しにくい酒の選び方
開業初期の酒の仕入れは、次の順番で考えると失敗しにくくなります。
まずは「売上を作る定番」を決める
最初に決めるべきなのは、看板になる珍しいお酒ではなく、毎日の売上を支える定番です。
- 生ビール
- ハイボール
- レモンサワー
- グラスワイン
- 焼酎
- 日本酒
- ノンアルコールドリンク
これらは、お店の利益と回転を支える土台です。土台が整っていない状態で高額ボトルを増やすと、売上は安定しにくくなります。
次に「客単価を上げる提案酒」を入れる
定番が決まったら、次に客単価を上げる提案酒を入れます。たとえば、料理に合わせるグラスワイン、食後酒、クラフトジン、季節の日本酒、少し良い焼酎などです。
ここは、お店の個性を出しやすい部分です。
ただし、種類を増やしすぎると、お客様もスタッフも選びにくくなります。最初は3〜5種類程度に絞ると、提案しやすくなります。
最後に「話題になる高額ボトル」を少数入れる
プレミア酒やヴィンテージボトルは、最後に少数入れるのがおすすめです。
理由は、開業してみないと実際のお客様の好みがわからないからです。
「ワインが出ると思ったら、実際はハイボールが強かった」
「日本酒を厚くしたら、女性客には軽めの白ワインのほうが動いた」
「珍しいウイスキーより、食後の甘口酒のほうが喜ばれた」
こうしたことは、営業してみて初めて見えてきます。だからこそ、開業初期は余白を残しておくことが大切です。
亀屋矢崎商店が考える、開業初期の酒仕入れの正解
私たちが考える開業初期の酒仕入れの正解は、「たくさん揃えること」ではありません。
お店のコンセプト、料理、客単価、席数、保管スペース、営業日数に合わせて、売れる順番を決めることです。
亀屋矢崎商店は、1961年の創業以来、業務用酒販として多くの飲食店様とお付き合いしてきました。ビール、日本酒、焼酎はもちろん、ウイスキー、ブランデー、シャンパン、リキュールなどの洋酒、食品まで幅広く取り扱っています。
私たちの強みは、単に商品をお届けすることだけではありません。営業担当が、メニューづくりや仕入れの考え方まで一緒に相談できることです。
「この業態なら、最初はこの本数で十分です」
「このボトルは面白いですが、開業直後は1本から様子を見ましょう」
「この料理なら、こちらのお酒のほうが提案しやすいです」
「珍しいお酒を入れるなら、売り方も一緒に決めましょう」
こうした会話を重ねながら、開業初期の不安を少しずつ減らしていくことを大切にしています。
高額なプレミア酒やヴィンテージボトルは、お店の魅力になります。
ただし、開業初期に大切なのは、在庫を抱える勇気ではなく、売れる形に育てる設計です。
まとめ:飲食店開業で酒を仕入れすぎないコツは「少なく始めて、反応を見て育てる」こと
飲食店開業時に酒を仕入れすぎないためには、次の考え方が大切です。
- 開業初期は、現金を在庫に変えすぎない
- 高額ボトルは、まず1本から反応を見る
- プレミア酒は「売り方」まで決めて仕入れる
- 定番、提案酒、高額ボトルの順番で揃える
- 仕入れすぎた在庫は、少量提供・料理提案・見える化で動かす
- 適正在庫は、最初から完璧を目指さず営業データで調整する
お酒の棚は、お店の顔です。
だからこそ、好きなお酒や珍しいお酒を並べたくなる気持ちはよくわかります。私たちもお酒が好きな会社ですから、そのワクワクは大切にしたいと思っています。
でも、開業初期のオーナー様に一番守っていただきたいのは、長く営業を続けるための資金と余白です。
お店が続けば、プレミア酒を育てる楽しみも、常連様と語り合う時間も、少しずつ増えていきます。
「開業時のお酒の仕入れ量がわからない」
「プレミア酒を入れたいけれど、在庫になるのが怖い」
「料理に合うお酒を、無理のない本数から始めたい」
そんなお悩みがあれば、ぜひ亀屋矢崎商店へご相談ください。
私たちは、東京・埼玉・神奈川の業務店様に向けて、酒類・食品の仕入れからメニューづくりまで、現場に寄り添ってお手伝いしています。
開業初期の大切な一歩を、無理なく、でもお店らしく。
うちの会社と一緒に、「売れるお酒」と「語りたくなるお酒」のちょうどよいバランスを見つけていきましょう。
